シャブルベシ 始まりの村からバンブーへ
窓の外から景色を見る。
そこに映るのは 大きな谷だ
山は高く崖のように立ち並んでいる。
日本でも四国の山あいなんか行くと谷沿いに山があり斜面が急だが
その規模よりもはるかに大きい世界がここに広がっている。
大陸の大きさを感じる。
村にはいくつものタルチョが風にはためき祈りを届けている。
消えたヘンリー王子はいったい何処へ行ったのだろうか
その想いを風に乗せ
タルチョと共にハタめかせ、どこか遠いところへ届けていく
シャブルベシ ここはランタントレッキングの始まりの村だ
シャブルベシからラマホテルという場所に向けて今日は足を進める。
アンナプルナの時と違い道は木に覆われてなく開放的な気分で進んでいく
途中 水牛の放牧で何度か足を止められる。
川沿いを歩いているため、何回か橋を渡る。
その中でも1番記憶に残っているのが、この橋だ
これは果たして今は使われているのだろうか
高所が苦手な自分からしたら「渡る」という発想は生まれて来ない。
答えの出ない問題の前に、しばらく立ち尽くして居ると 橋の向こうに人が現れた。
彼は僕に気付くと大きな声で何かを言ってきている。
なんだろう
彼はいったい僕に何を伝えたいんだろう
川の音にかき消され中々聞き取れない
いや 違う
聞こえていない訳ではない
わかっているんだが どうしても事実を受け止められない自分がそこに居る。
そう
彼は言っている。
「この橋を渡って来い」と、
絶望と恐怖に包まれる中
僕は自分の感情と感覚に蓋をして
ただ、「渡る」という行為だけに全てを集中した。
結果的にいうと
ふつうに渡れました。
僕の後からも普通に何人か渡って来ました。
どきどきしたぜ
ーーー
3時間ほど歩き続け
開けた河原に着く
時刻はちょうど12時前
ほどよく運動をして腹も空いて来た頃だ
河原の石に腰かけ
昼食の準備をする。
前回のトレッキングでは食事をすべて宿ですましていたが、今回はガスバーナーと鍋を持参し外で食べれるように用意して来た。
気持ちがいい
陽射しが暖かく
川が目の前で流れて
開放的な気持ちになる。
外でご飯を食べるだけで、どうしてこんなに満たされた気持ちになるんだろう。
気がつくと辺りは少し暗くなり、日が落ちかけている。
しまった。
今なんじだ!
時計の針は5時を指そうとしている。
山の夜は早い
急いで片付けをして、準備を整えトレッキングを開始する。
目的地のラマホテルまではあと3時間はかかりそうだ。
焦る気持ちを抑え 歩き続ける。
焦っているとこんなにも疲れるものなのか
1時間ほど経った頃 遠くに建物が見えた。
着いてみると、そこはラマホテルの手前の集落
バンブーだった。
体力も時間もなかったため今日はバンブーで泊まる事にした。
疲れたけど いい1日だった。